2019年12月01日

さよなら博物館

みなさんこんにちは、今日は現在の博物館の開館最終日なので
ちょっぴりセンチメンタルな気分になっていたり

、、、しないドライな学芸員Aです。

こういう日はいつもと違うことが起こるもので、
もう既に灯油が切れたり、非番のはずの館長が来たりしましたし、
しかも12月には珍しく空が綺麗に晴れていたりします(←関係ない)。

1979年に開館してから40年。

さきほど年報をひも解いたりして、入館者数の推移を見ていました。
今年11月までの全部の合計をしてみたらこうなりました。


約74万4千人

これが多いのか少ないのかよく分かりませんが、
世界の男性の数が35億だそうですから、
それにくらべると随分少ないことがわかります。
(わからなくていい)

館がスタートして3年目くらいまでは、入館者数は年間2万人くらいでした。
それが次第に増加して、火焔型土器が国宝に指定された1999年には年間3万3千人を越えました。
これが現在に至るまでの年間入館者数の最高記録です。

その後、2004年の中越地震と2011年の長野県北部地震の年に
1万3千人くらいに落ち込む年もありましたが、
逆に大地の芸術祭の年には例年よりも3千人ほど増えるという現象が
3年に1回繰り返し起きていました(トリエンナーレ)。

これを除くとここ数年は1万5千〜1万6千人ほどで推移していたようです。

月別の推移を見ると、2月が興味深い推移を示していました。
2004年に約1300人だったものが、2005年から2012年の8年間、
2月の入館者数が3千人を越え続け、
そして2013年からは約1300人〜2100人に減少していたのです。

2月は大雪のシーズンですので、なにもなければ少ないはずですが、
年間のうちで高い割合を示します。

ひとえに「雪まつり」のおかげでしょう。

だから、上の変化ももしかすると雪まつりと関係があるのかもしれません。
それにしてもなぜ8年間だけ・・・・?
館長に訊いてみたら、こういう回答でした。


「俺が来てから雪まつりの広場のカウントをやめたんだ」


な、、なるほど。

一般的に、博物館の業績評価項目のひとつに入館者数がありますから、
こうした動向の要因分析は今後必要だろうと思います。
またこれから観光がもっと重視されるようになるなら、
ほかの項目も総合的に分析して評価し、
博物館の経営に役立てる日がくるかもしれません。

さて、まだこれから何が起こるか分かりませんが、
閉館のシャッターが下りるその瞬間まで気を引き締めて業務に臨みたいと思います。


学芸員A

●追記
1981年から2019年12月1日(本日)までの来館者数の合計は745,126人でした(1979年・1980年の記録なし)。
ご愛顧いただいた皆様に、心より深く感謝申し上げます。
posted by 十日町市博物館 at 12:08| Comment(0) | 日記

2019年11月28日

硫黄の同位体で産地が分かる?

みなさんこんにちは学芸員Aです。

理化学研究所さんのプレスリリースで、こういう発表がありました。


超微量硫黄同位体比分析を考古学に応用する
−京田遺跡の出土品から赤色顔料を精密分析−

2019-11-28_硫黄の同位体で朱の産地が分かる?.jpg

土器や石器に残っていた朱(硫化水銀)の同位体比を調べたら、朱の産地が北海道の可能性が高かった、というものです。

同じ元素でも中性子の数が違うものがあって、それを同位体といいますね。硫化水銀に入っている硫黄(S、元素番号16)のなかの同位体の存在比率が、産地によって違うことに目を付けて、産地の朱と出土した朱とを比較してみたら、北海道産とわかった(推定した)わけです。


そんな方法があったのか!すげー!


って思ったのですが、概要だけ見てるとどうも「産地によってわかることがある」くらいの分析だとわかって、平静を取り戻しました。

北海道の産地のうち2つだけが、δ34S(デルタ・サルファー 34:硫黄34の偏差)がとびぬけて高いこと(+8.4‰と9.4‰)が拠り所なのです。

ほかは、-8.0‰の丹生(大分県)、-2.4‰の大和(奈良県)の2つが特徴的なのですが、北海道、徳島県、大分県に1つずつ、-4.5〜-4.8‰に収まる産地があります。もし土器についた朱の偏差が-4.5〜-4.8‰だった場合は、産地は「絞り込めない」と予想されます。

ただですね、適用範囲に大きな制限があるとは言っても、これまで全く分からなかったものが分かるようになるのはすごいことです。それに今回の島根県出土の朱が、わりと近いところにある大産地(徳島)のものではなく、ずっとはなれた北海道産のものだったことも衝撃です。

糸魚川のヒスイが沖縄や北海道にもいくくらいですから、縄文時代後期から晩期に広域ネットワークが発達したことは言わずもがななのですが、その背景にはきっとコミュニケーションの取り方の変化だとか、海洋交通の事情(技術)の変化なんかが絡んでいるんじゃないかとモクモクと妄想したりするわけです。単なる赤い顔料と思いがちですが、縄文人にとっては非常に大事なものだったのでしょう。

あ〜〜、、、「分かる」ってなんて素晴らしいんでしょう!

そういえば、今年度の笹山遺跡の発掘で、鮮やかな赤色が塗られた土器の破片が出土しました。あの鮮やかさはベンガラではなく、たぶん朱です。笹山ではけっこう珍しいです。分析できたら素晴らしいんだけどなあ・・・・理化学研究所に訊いてみようそうしよう。


学芸員A
posted by 十日町市博物館 at 16:10| Comment(0) | 日記

2019年11月26日

博学連携プロジェクト 子ども縄文フォーラム2019

みなさんこんにちは、なんだかんだで、ここをご覧くださっているみなさんのおかげで辛うじて生きている学芸員Aです。

さて、昨日、新潟県立歴史博物館にて催された、博学連携プロジェクトの「子ども縄文フォーラム」に参加してきました。


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十日町市からは下条小学校、中条小学校、松代小の3校も参加していたこともあり、色々と楽しみにしていました。内容は、フォーラムのパネルディスカッションとポスターセッションとの2本立てです。

  • パネルディスカッション

この半年間の児童の研究成果ないしは感想が口頭発表されました。
現代との対比はここ数年のスタンダードなアプローチになっていて、これに加えて今回は自然との共存共栄というテーマを持ち出す学校がありました(小千谷市の吉谷小学校さん)。縄文というフィルターを通じて現代を見つめ直すという方向性がはっきり出てきた感じがします。

興味深いことに、「自然を大切にしよう」というありきたりなスローガンに落ち着くのではなくて、「自然主義では駄目、共に生きるために科学が必要」だということも言っていた点でした。一歩踏み出た、大変深みのある意見です。

気になったのは松代小学校さんの発表で、縄文時代に比べて現代は死者数が増えており、これは戦争の影響であり、助け合いながら生きる縄文に学ぶ必要があるという部分でした。これは若干誤解を招く言い方で、単純な死者数ではなくて、暴力による死亡率のことだろうと思います。そうだとすると、かなり新しいデータで、元ネタはこれかもしれません。

 縄文時代は“平和”だった 暴力死亡率は1.8%――「戦争は人間の本能」は誤り?

また強い戦士に特権を与える社会集団ほど戦争を起こしやすいという研究も最近出されて、話題になりましたね。

 asahi.com :「男の強さ」幅利かす社会、紛争が起きがち 戦士に特権


人の話を聞くリーダーが必要だと述べた学校さん(失念)もありましたが、一方で強さを高く評価するリーダー以外の人々(社会)にも原因があるのかもしれません。

そんなわけで、発表を聞きながらモヤモヤしていました。つまりは、ちょっと考えさせられた、いい発表だったということでしょうか。

  • ポスターセッション

私は関原小学校しか見ていなかったので、全体評価ができません。
ネットのお蔭だと思いますが、みなさん情報収集がそつない感じがします。幅広く集めていて、全体のボリュームが均等で、よくまとまっている、という感じです。どのポスターもこの水準をクリアしています。実は関原小学校に前から見られる傾向でして、基礎学習のレベルの高さを物語っていると思います。

ですが、他方で、その情報に基づいて自分が何に気付いたのか、何に取り組んでみたのか、さらにそこからどう考えたのか、という大事なオリジナリティが希薄になっている印象が残りました。ちょっと残念。

  • 学芸員のイチオシ

選ばせてもらった1枚は、「季節ごとの縄文人の食事とは!?」(長谷川さんたち)でした。これは春夏秋冬のそれぞれでとれる食材の保存について、単に「保存する」の一言で片づけてしまうのではなく、「干して保存する」「1年間保存する」といったように、その方法や期間に違いがあるという点に気付いたことを評価しました。方法や期間は年間の食料・事のスケジュールに大きくかかわる部分で、それこそまさに生活の根幹だからです。こういう気づきに本人たちが気付いたのかどうかは若干不透明でしたが(笑)、こういうところがオリジナリティだと思います。

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*画像は小さくしています

学芸員のイチオシは、「受賞」というわけではないかもしれませんが、顧問の藤岡先生は「書状の一枚くらいあげてもいいのではないでしょうか」とおっしゃってました。ワタクシも「形として見える何かがあっていいと思います。」とお答えしました。このあたりは、事務局のお考えがあってのことかもしれませんので、それならそれで尊重したいと思います。

  • 展示されます

この壁新聞を含む児童の研究成果は、2月12日〜25日に十日町情報館ギャラリーで展示(子ども縄文研究展2019)されますので、是非ご覧ください。

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学芸員A
posted by 十日町市博物館 at 11:14| Comment(0) | 日記